2025年10月施行|経営・管理ビザの改正ポイントと新要件まとめ

2025.10.25


はじめに

2025年10月16日施行の改正により、在留資格「経営・管理」に関する許可基準が大きく見直されます。

これまでの制度と比べ、常勤職員の雇用義務、資本金3,000万円以上、日本語能力要件など、外国人経営者にとって実質的なハードルが引き上げられる内容となっています。

本ページでは、法務省の公表資料に基づき、改正のポイントや経過措置、実務上の注意点を分かりやすくまとめています。

主な改正内容

1 常勤職員の雇用について

申請者が営む会社等において、1人以上の常勤職員を雇用することが必要になります。

「常勤職員」の対象は、日本人、特別永住者及び「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」に限ります。
2 資本金の額等について

3,000万円以上の資本金等が必要になります 。

  • 事業主体が法人である場合:株式会社における払込済資本の額(資本金の額)又は合名会社、合資会社又は合同会社の出資の総額をさします。
  • 事業主体が個人である場合:事業所の確保や雇用する職員の給与(1年間分)、設備投資経費など事業を営むために必要なものとして投下されている総額をさします。
3 日本語能力について

申請者又は常勤職員のいずれかが相当程度の日本語能力を有することが必要になります 。

相当程度の日本語能力とは、「日本語教育の参照枠」におけるB2相当以上の日本語能力であり、日本人又は特別永住者以外の方については、以下のいずれかに該当することを確認します。

  • 日本語能力試験(JLPT)N2以上の認定を受けていること
  • BJTビジネス日本語能力テストにおいて400点以上取得していること
  • 中長期在留者として20年以上我が国に在留していること
  • 日本の大学等高等教育機関を卒業していること
  • 日本の義務教育を修了し高等学校を卒業していること
4 経歴(学歴・職歴)について

申請者が、経営管理又は申請に係る事業の業務に必要な技術又は知識に係る分野に関する博士、修士若しくは専門職の学位¹を取得していること、又は、事業の経営又は管理について3年以上の実務経験²を有する必要があります。

  1. 外国において授与されたこれに相当する学位を含みます。
  2. 在留資格「特定活動」に基づく、貿易その他の事業の経営を開始するために必要な事業所の確保その他の準備行為を行う活動(起業準備活動)の期間を含みます。
5 事業計画書の取扱いについて

在留資格決定時において提出する事業計画書について、その計画に具体性、合理性が認められ、かつ、実現可能なものであるかを評価するものとして、経営に関する専門的な知識を有する者¹の確認を義務付けます 。

  1. 施行日時点においては、以下の者が当該者に該当します。
  • 中小企業診断士
  • 公認会計士
  • 税理士

申請に関する取扱い

1 事業内容について
業務委託を行うなどして経営者としての活動実態が十分に認められない場合は、在留資格「経営・管理」に該当する活動を行うとは認められないものとして取り扱います。
2 事業所について
改正後の規模等に応じた経営活動を行うための事業所を確保する必要があることから、自宅を事業所と兼ねることは、原則として認められません。
3 永住許可申請等について
施行日後、改正後の許可基準に適合していない場合は、「経営・管理」、「高度専門職1号ハ」又は「高度専門職2号」(「経営・管理」活動を前提とするもの)からの永住許可及び「高度専門職1号ハ」から「高度専門職2号」への在留資格変更許可は認められません。
4 在留中の出国について
在留期間中、正当な理由なく長期間の出国を行っていた場合は、日本における活動実態がないものとして在留期間更新許可は認められません。
5 公租公課の履行について
在留期間更新時には、以下の公租公課の支払義務の履行状況を確認します 。
(1) 労働保険の適用状況
  • 雇用保険の被保険者資格取得の履行
  • 雇用保険の保険料納付の履行
  • 労災保険の適用手続等の状況
(2) 社会保険適用状況
  • 健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格取得の履行
  • 上記社会保険料納付の履行
(3) 事業所として納付すべき以下の国税・地方税に係る納付状況
  • 法人の場合
  • 国 税 : 源泉所得税及び復興特別所得税、法人税、消費税及び地方消費税
  • 地方税 : 法人住民税、法人事業税
  • 個人事業主の場合
  • 国 税 : 源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税、相続税、贈与税
  • 地方税 : 個人住民税、個人事業税
6 事業を営むために必要な許認可の取得について
申請者が営む事業に係る必要な許認可の取得状況等を証する資料の提出を求めます。
在留許可を受けてからでないと許認可の取得ができないなど、正当な理由が認められる場合には、次回の在留期間更新申請時に提出を求めます。

施行に伴う留意点

1 施行日前に受け付けた申請について

本改正の施行日の前日までに受付し、審査を継続している在留資格認定証明書交付申請や在留期間更新許可申請等については改正前の許可基準を適用します。

2 既に「経営・管理」等で在留中の方からの在留期間更新許可申請について

既に「経営・管理」で在留中の方が施行日から3年を経過する日(令和10年10月16日)までの間に在留期間更新許可申請を行う場合については、改正後の基準に適合しない場合であっても、経営状況や改正後の基準に適合する見込み等を踏まえ、許否判断を行います。 

なお、審査においては、経営に関する専門家の評価を受けた文書を提出いただくことがあります。

施行日から3年を経過した後になされた在留期間更新許可申請については、改正後の基準に適合する必要があります。

改正後の基準に適合しない場合であっても、経営状況が良好であり、法人税等の納付義務を適切に履行しており、次回更新申請時までに新基準を満たす見込みがあるときは、その他の在留状況を総合的に考慮し、許否判断を行います。

「高度専門職1号ハ」(「経営・管理」活動を前提とするもの)についても、「経営・管理」の許可基準を満たすことが前提となることから、上記と同様に取り扱います。

3 「特定活動」から「経営・管理」への在留資格変更許可申請の取扱いについて
特定活動(44号・外国人起業家(スタートアップビザ) )からの資格変更

外国人起業活動促進事業に関する告示の一部を改正する告示の施行日前に確認証明書が交付されている場合は、「経営・管理」への在留資格変更許可申請の際に、改正前の許可基準を適用します。

改正告示の施行日以降に確認証明書が交付されている場合は、「経営・管理」への在留資格変更許可申請の際に、改正後の許可基準を適用します。

特定活動(51号・未来創造人材(起業準備活動))からの資格変更

施行日前にの前日時点で、「特定活動(51号)」の在留資格認定証明書交付申請等を行っている場合や同在留資格で在留中の場合は、「経営・管理」への在留資格変更許可申請の際に、改正前の許可基準を適用します。

施行日以降に「特定活動(51号)」に係る在留資格認定証明書交付申請等を行った場合は、「経営・管理」への在留資格変更許可申請の際に、改正後の許可基準を適用します。

Q&A

Q:新たに雇用が義務付けられる「常勤の職員」について、どのような人を雇用すればよいのですか?

A:許可基準である「常勤の職員」の対象は、日本人、特別永住者及び「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」)に限られます。「技術・人文知識・国際業務」、「高度専門職」、「家族滞在」、「留学」等在留資格をもって在留する外国人は対象になりません。

Q:資本金等の事業の規模はどのように確認するのですか?

A:登記事項証明書等により、経営する事業の規模が3,000万円以上の事業の規模であるか確認します。

具体的には、事業主体が法人である場合は、株式会社における払込済資本の額(資本金の額)又は合名会社、合資会社若しくは合同会社の出資の総額を確認し、事業主体が個人である場合は、事業所の確保や雇用する職員の給与(1年間分)、設備投資経費など事業を営むために必要なものとして投下されている総額を確認します。

Q:日本語能力は、どの程度の能力が必要ですか?また、どのように証明するのですか?

A:「日本語教育の参照枠」におけるB2相当以上の日本語能力が必要です。

具体的には、日本人又は特別永住者の方以外については、以下のいずれかを満たすことが求められます。

  • 日本語能力試験(JLPT)N2以上の認定を受けていること
  • BJTビジネス日本語能力テストにおいて400点以上取得していること
  • 中長期在留者として20年以上我が国に在留していること
  • 日本の大学等高等教育機関を卒業していること
  • 日本の義務教育を修了し高等学校を卒業していること

試験により証明する場合は試験の合格証や成績証明書、その他の方法により証明する場合は日本語能力を有する者の身分及び経歴を証する資料(住民票、卒業証明書等)を提出して証明することができます。

なお、申請書(所属機関作成用1)3(11)に日本語能力を有する者の有無及びその内容を記入いただきますが、「内容」欄には、「日本人を雇用している」、「経営者(申請人)が日本語能力N2以上の認定を受けている」など、具体的に記入してください。

Q:事業計画を確認する専門家は、具体的にどのような人ですか?

A:企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する方を想定しており、施行日時点においては、中小企業診断士、公認会計士及び税理士が該当します。

Q:在留期間の更新をするときに必要な書類を教えてください。

A:所属機関の登記事項証明書(所属機関が法人の場合)や所属機関における公租公課の支払い義務の履行状況を明らかにする資料等が必要になります。

詳しくは、こちら(在留資格「経営・管理」案内ページ)を確認してください。

Q:事業活動に必要な許認可が、「経営・管理」の在留許可を受けてからでないと取得できないときは、どうすれば良いですか?

A:あらかじめ取得できないことに正当な理由があると認められる場合には、次回の在留期間更新許可申請時に取得状況を確認することになるため、取得できない具体的理由を説明した文書(様式自由)を提出してください。

Q:改正される前に「経営・管理」の申請をしましたが、新基準が適用されてしまうのですか?

A:施行日の前日までに受付し、審査を継続している在留資格認定証明書交付申請や在留期間更新許可申請等については改正前の許可基準を適用します。ただし、改正前の許可基準の適用により許可処分となった場合であっても、施行日から3年を経過した後は改正後の許可基準を満たす必要がありますので、十分に留意してください。

Q:「経営・管理」で在留していて、もうすぐ在留期間の更新が必要ですが、更新申請までに基準を満たせないときはどうすれば良いですか?

A:施行日から3年を経過する日(令和10年10月16日)までの間については、改正後の基準に適合していない場合であっても、経営状況や改正後の基準に適合する見込み等を踏まえ許否判断を行います。

まとめ

今回の改正は、単なる基準の厳格化ではなく、日本で安定的かつ持続的な経営活動を行う外国人経営者を適正に支援するための制度整備といえます。

新要件への対応には時間を要する場合もあるため、現行で「経営・管理」ビザをお持ちの方は、次回の更新に向けて早めの準備を進めることが重要です。

当事務所では、改正内容に沿った申請準備や事業計画の確認についてもサポートしております。不明点や不安がある方は、経験豊富な専門家に相談し、確実な対応を進めていきましょう。

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